風の旅人 - さすらい人のつぶやき

スナフキンのように飄々と生きています

伝説の予備校教師 奥井潔先生

先生によって人生を大きく変えられた経験が3度ある。その2度目の経験で出会ったのが駿台予備校時代の奥井潔先生だ。英語を担当しており、もちろん英語教師としても素晴らしい授業をしてくれたのだが、奥井先生の場合それ以外の授業内容が素晴らしかった。

 

最初の授業から驚かされたものだ。180㎝越えの柔道で鍛えられた体をのっそのっそと揺らしながら教室に入ってきて、大きな目をぎょろつかせながらいきなり「君たち、skin depthという言葉は知っているか」と聞いてきた。とまどう私たちを睨みながら奥井先生は言った。「皮一枚剥げば美人もただの肉」そう言いながら、黒板の前を歩き回る。その後はひたすら恋愛講座である。我々はいかに女性の美しさに惑わされる生き物か、恋愛というものの前には自分の信念などすぐに吹っ飛んでしまう、と。スタンダールからドフトエフスキーまで恋愛に関係する小説の話をしまくった。

 

「大学に入ったら勉強もいいが恋愛をしなさい。その方が人生にとってよほど有意義だよ」とそうも言った。

 

恋愛の話だけでは無い。美とは何か、真理とは、人の心とはどう動くものなのか、人生にとって必要なことについて基本中の基本を教えてくれた。今の私の考え方も奥井先生の授業に大きく依存している。

 

こんな素晴らしい先生に、あんな面白い授業にもう出会うことは無いと思っていたが、今年に入って出会ってしまった。人生を変えられた3度目の経験である。もっと早く出会いたかった、と心底思えたものだ。その先生とは、その授業とは、これもまた機会が来たら書くことにしよう。